国立大学法人 鹿児島大学教育学部附属特別支援学校

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研究の概要

令和4~5年度

研究主題

子どもが,目標を捉え,自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができる授業づくり

~「学びに向かう力,人間性等」の目標設定と評価の在り方に視点を当てて~

研究の概要

 特別支援学校では発達の状況や認知の特性等が様々な子どもが在籍しており,それぞれの実態に応じた「学びに向かう力,人間性等」の捉え方やそれを育むための授業づくりにおける工夫を教師が見出すことが求められています。しかしながら,その観点別評価の対象となる「主体的に学習に取り組む態度」について,「主体的な取組」という子どもの内面の働きが主となった行動の姿は,その行動の元となる内面の働きを可視化しにくいことや,成長とともに変化していくものであることから,捉えにくさを感じている教師が少なくありません。本研究では,授業における主体的に学習に取り組むためのポイントを整理し,発達年齢1歳から11歳までの発達の特徴や推移に応じた指導・支援の工夫を見出した上で授業実践と授業研究による授業改善を重ね,これらの授業実践の経過と子どもの変容について考察することで,「主体的に学習に取り組む態度」の在り様や授業づくりの工夫を明らかにすることを目的としました。

 令和4年度は,「発達検査やそのカンファレンスをどのように個に応じた支援につなげるか」について,大学の先生による専門的な助言を仰ぎながら基礎的な研修を行った上で,基礎研究として,「知的発達の程度が1歳半から2歳台の子ども自身による目標の捉え方,自己評価,学習の調整」の可能性と,それを実現する授業展開や支援について検討しました。一人一人の子どもが,どのような願いをもち,外界からの働きかけをどのように受け止め,どのように働きかけていくかという内面の働きを,発達理論をもとに教師が思い描くことで,授業における「学びに向かう力,人間性等」の目標を明確にし,子どもの発達状況に応じた授業づくりの工夫を見い出すことができました。

 令和5年度は,令和4年度の取組で明らかにした「主体的に学習に取り組むための八つのポイント」に対して,発達年齢1歳から11歳までの発達におけるそれぞれの特徴や推移に応じた主体的に学習に取り組むための工夫を「『主体的に学習に取り組む態度』の参考表」としてまとめ,授業づくりの手掛かりとしながら,教科別の指導,教科等を合わせた指導における授業実践を重ねました。実践を通した授業づくりや子どもの変容を分析し,主体的に学習に取り組むことのできる授業づくりの手順やポイント等をまとめ,研究紀要24集及び,令和6年2月2日(金)の公開研究会で報告いたしました。

 本研究の成果と課題を基に,今後も子どもたちの資質・能力の獲得とともに将来の社会生活において,学ぶ意欲をもち,学び続けていくことを思い描きながら,日々の授業実践に努めてまいります。

 

 

 

令和2~3年度

研究主題

知的障害のある子どもの「深い学び」の実現に向けた授業づくり

研究の概要

 新学習指導要領では,改訂の基本的な考え方として,社会に開かれた教育課程の実現,育成を目指す資質・能力の明確化,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の推進,各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立などが示され,本校は令和元年度までの研究で,育成を目指す資質・能力を明確化した授業づくりの在り方やカリキュラムの計画・実施・評価・改善の仕組みの構築に取り組んできました。

 令和2年度から「知的障害のある子どもの『深い学び』の実現に向けた授業づくり」を研究主題として2か年計画で設定し,研究に取り組んでいます。令和2年度の研究では,教師が一人一授業に取り組む中で得た,「深い学び」の実現に有効だと思われる知見の集約や学習に取り組む子どもの様子から,「深い学び」をしていると考えられる姿の抽出,分析などを行いました。その成果として「各教科等の見方・考え方一覧表」や「本校の子どもの『深い学び』の姿のイメージと『深い学び』を実現するための工夫」としてまとめ,「深い学び」の実現に向けて校内で共有できる授業づくりのツールを作り上げました。

 令和3年度の研究では,令和2年度に作成した授業づくりのツールを活用した授業実践と子どもの学びの姿を基にした授業研究に取り組むことで,子どもたちが「深い学び」を通して,資質・能力をよりよく身に付けることを目指しています。

 また,一連の取組について,校内の研究会で協議することで,本校の考える,「深い学び」の実現に向けた授業づくりの方法やツールの改善や有効性の検証に取り組んでいます。

 

 

 

 

 

令和元年度

研究主題

育成を目指す資質・能力を育むためのカリキュラム・マネジメント実現に関する研究
子どもの学びから始める3つのPDCAサイクル

研究の概要

 本校では,授業研究を基軸とした授業づくりの取組を土台に,日々の授業における児童生徒の学びの姿を,日々の授業改善はもちろん,年間指導計画等の評価・改善に生かし,学校全体で組織的・継続的に児童生徒の学びを育む授業を展開できるようにするカリキュラム・マネジメントの実現を目指した研究に取り組んできました。本研究では,カリキュラムを教育課程編成サイクル,授業づくりサイクル,授業実践サイクルの3つのPDCAサイクルが重なり合う構造で成り立っていると考えています。これまでの研究で構築してきた,3つのサイクルが相互に密接な関連を図りながら循環するカリキュラム・マネジメントの取組を基に,学校のシステムとして持続的に運用していくための実践を進めています。

カリキュラム・マネジメントの持続可能な運用の在り方

 今年度は,これまで6年間の実践研究で見出してきたカリキュラム・マネジメントの取組の良さを生かしつつ,継続的に運用していく方法を明らかにしようと実践を行っています。そこで,一人一つの単元(題材)において授業計画シートの作成,日々の授業記録による授業研究に取り組み,教科横断的に育むことができる資質・能力や同時期の単元(題材)との関連を明確にしていくことで,同時期の複数の教科等,単元(題材)についても評価することができると考え,実践に取り組んでいます。

資質・能力の評価を根拠にした教育課程編成の在り方

 学校教育目標や教師の願いなどから「本校の児童生徒に育てたい資質・能力」を学部ごとに「学部で目指す姿」,「授業で目指す姿」として,より具体的に設定し,日々の授業の中で児童生徒が資質・能力を身に付け,発揮している姿をイメージしながら授業づくりができるようにしました。これによって日々の授業記録の中で,資質・能力の育ちや変容を連続的に評価することができるようになると考えます。この資質・能力の評価を根拠に,単元(題材)の計画や教育課程の評価―改善を行っていくことを目指しています。

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