寺山の自然・環境
植物
この施設の大部分は森林で、その中に生息する植物は、裸子植物24種、シダ植物54種、被子植物522種がわかっています。人口林には、マツ、スギ、ヒノキが植林されています。マツはマツクイムシの被害にあっていますが、手をいれていない自然の状態のままになっています。スギは、谷筋の湿った場所に植林しているため、目に留まりにくいのですが、山の中に入ると、立派に生育したスギが林立しているのを見ることができ、建築用材としての用途が見込まれます。ヒノキ林については、道路沿いから見ることができる場所が4か所あります。
天然林では主として、ブナ科のイタジイ、マテバシイ、アラカシ、クスノキ科のクスノキ、タブノキ、アオガシを中心にした常緑広葉樹の林があります。これらは、戦後一度伐採されたので、約70年の二次林になります。この下に、アカメガシワ、ミヤマシキミ、イヌビワ、ヒサカキ、キブシ、アオキ、ヤツデなどの低木層があります。草本は、カラムシ、イタドリ、イヌタデ、タケニグサ、カタバミ、タチツボスミレ、チドメグサ、キツネノマゴ、ヒメジョン、ノゲシ、ツワブキ、カモジグサ、メイジワ、オイジワ、ススキ、チガヤ、コゴメスゲなどがあり、シダでは、ワラビ、コシダ、ウラジロ、ホシダ、ミゾシダ、ホウビシダ、シロヤマゼンマイなどが代表的なものとして挙げられます。
動物
動物は、植物に依存して生活しているので、その種類は植物層と密接な関係があります。周囲の環境の変化によるのでしょうか、最近ではタヌキが見られなくなり、その代わりにイノシシが出没するようになりました。ノウサギやムササビの姿もみられます。鳥類は、これまで約70種が確認されており、その中で約40種は毎年観察されています。トビ、コジュケイ、キジ、キジバト、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ヤマガラ、シジュウカラ、ヒョウガカケス、ハシボソガラスなどがいます。ヤマガラやシジュウカラは樹木の空洞や巣箱に巣をつくり、繁殖しています。その他キジ、ウグイスなどが営巣しており、時として、サンコウチョウ、アカショウビンの姿も見られます。
ヒキガエルは夜になると出てきて採餌しています。アオダイショウ、トカゲ、マムシなどの爬虫類も生息しています。昆虫は、モンシロチョウ、アサギマダラなどの蝶類、シロスジカミキリ、ゴマダラカミキリなどのカミキリ類、シオカラトンボ、オニヤンマなどのトンボ類、アブラゼミ、ツクツクボウシなどの蝉類、エンマコウロギ、スズムシなどのコオロギ科の昆虫が生息しています。
この施設の中における動物たちの生態系態には、とても興味深いものがあり、たとえば、鳥類が巣を作る場所はそれぞれ異なっており、高木層にカケス、ヒヨドリ、低木層にはシジュウカラ、ヤマガラ、地上にはキジ、コジュケイなどが目に留まります。
寺山の四季
春
春は生物が活発に活動を始める季節で、花が咲き、蝶が舞い、鳥がさえずり、研究施設にも活気が溢れてきます。春早く、他の植物に先駆けて咲く木に、アセビ、ウメがあります。その頃、新葉の出る前に花を咲かせるキブシ、ヤシャブシ、ニワトコ、イヌシデ等があります。一方、ワラビ、ゼンマイ、タラノキ、ツワブキ、ミツバ、セリ、フキ等の山菜採りやタケノコ堀りが楽しめます。新緑の季節ともなると、鳥のさえずりがあちこちで聞かれるようになり、その中で代表的な鳥は、だれもが知っているウグイスです。
夏
夏は四季の中でも生物層が一番豊富な時期です。野鳥、セミしぐれ、トンボ類、蝶類です。本施設に夏が来たことを一番感じさせるのは野鳥の鳴き声です。ホトトギス、アカショウビン、サンコウチョウ等の独特な鳴き声で分かります。また、セミの出現期や鳴く時刻は種類によって多少違うので、それによって夏の移り変わりを知ることができます。
秋
エンマコウロギやスズムシの鳴き声が、秋の訪れを知らせてくれます。秋は収穫の時期であり、この施設での春に植えた植物の収穫に賑わっています。サツマイモ掘りに附属幼稚園や市内の幼稚園・保育園の園児らが歓声をあげ、教育学部の技術科の学生も汗をながして収穫します。動物は、子孫を増やすため、あるいは厳しい冬に備えて、忙しく過ごしています。晩秋には、イロハカエデ、ナンキンハゼなどが美しく紅葉しています。
冬
時には、雪もちらつく寒さの厳しい冬は、生物の活動もにぶくなり、研究施設もひっそりよしていますが、シベリアから渡ってきたツグミやシロハラが、その寂しさをまぎらわせてくれます。植物は、いろいろな工夫をこらして越冬するし、動物は、それぞれの種類・体のしくみ・生活の仕方に応じて違った越冬をします。
鉱物・地質
①寺山玄武岩
大崎鼻から吉野大地寺山に至る付近の地質は、下位のものから上位のものへの順に竜ヶ水安山岩、大崎鼻安山岩、寺山玄武岩、および新期火山灰軽石層から構成されている。
②姶良カルデラ壁の一部
吉野大地の東部および南部は、標高200~400mの急崖をもって鹿児島湾に臨む。この急崖は姶良カルデラ西壁の一部である。
③水源地
シラス台地の常として水に乏しいが、帯水層が露出するところに湧き水や貯水地がある。
寺山公園
寺山周辺地区は、霧島屋久国立公園の第二種特別地域の指定区域で、条例に基づく風致地区でもあり、県下第一の面積をもつ風致公園で、風光明媚な場所としてもしられている。
史跡
①西郷南洲寺山開拓地遺跡
寺山自然遊歩道に沿ったところにあり、遺跡の題字は東郷平八郎の書である。明治8年西郷隆盛は寺山に開墾社を設立、昼間は荒地を開き、夜間は学問に励む場所で若き青年たちと共に開墾に従事した。
②寺山炭窯および炭窯の碑
薩摩藩では島津彬ににより安政初年に当時わか国としては、鍋島藩などと共に最も先進的な製鉄製鋼事業を開始している。その反射炉や集成館への燃料供給のため、安政5年に寺山に炭窯が建設され、三期のうち一基だけが現存している。2015年「明治日本の産業革命遺産製鉄・製鋼・造船・石炭産業」で世界遺産に登録されました。